趣味で始めたバイヤーの仕事!約束通り納品できない時どうなるの?
無理な注文を引き受けた。しかし、契約どおりに納品できず・・・
ペナルティーを払わなければならない?
守さんは21歳のおしゃれな大学生です。
将来はファッション関係の仕事に就きたいと考えています。
そのため暇を見つけてはフリーマーケットに出かけ、古着を探しては知り合いの古着屋に売るアルバイトをしています。
センスが良く、守さんの評判が口コミで広がり、プロの業者からの注文もあることから結構いい稼ぎがあるのです。
やった!!注文がきた!
ある日、馴染みの古着屋の小森さんから、ビンテージもののジーンズ3本を探してほしいと頼まれたのです。
「1本8万円で買うから。差額は君の取り分にしていいからね。」と言われ、守さんは張り切って探しにでかけました。
そしてなんと1本6万円で仕入れることができたのです。守さんは大喜び。
仕入との差額とアルバイト代2万円とを合わせてたった4日で8万円もの大金が転がり込んできたのです。
しかし、それが・・・。
守さんはすっかり舞い上がり、自分の能力を過信するようになってしまいました。
大きい注文が入った!!
1か月後、また小森さんから開店7周年記念セールの目玉にするというジーンズ50本を注文されました。
条件は前と同じです。その上、「先に半金200万円を渡すから。」と言うのです。
守さんが張り切ったのは言うまでもありません。
「上手くいけば100万円もうかるかも。」
調子に乗っている上に、仕入れのお金を出してもらえることになったことも守さんの気を大きくしたのです。
守さんはその注文を即座に引き受け、嬉々として契約書にもサインをしたのでした。
しかし、本数が多かったこともあり、約束の納期に集まったのは、わずか20本。
このままではセールには間に合いません。
小森さんはあわてて残りの30本を1本10万円で他の店から仕入れました。
発注元から納品できない分請求された!!
古着屋の小森さんは守さんに差額60万円を請求してきたのです。
守さんは驚きましたが、小森さんは契約書を示して言うのです。
「契約書には『買取価格1本8万円。納期に間に合わず、私が直接仕入れた場合には、その差額を君が賠償する。』となっていたよね。君は納得してサインしたのだからきっちり払ってもらうよ。」
サインは確かにしました。
有頂天で・・・。
小森さんはいざとなったら裁判も辞さないと言うのですが、冷静に見直してみるとこの契約、自分にとってずいぶん不利な内容だと思い、守さんは納得がいきません。
本当に支払わないといけないのでしょうか?
今回は契約のトラブルですが、「契約」とは何でしょうか?
「契約」とは、簡単に言うと、拘束力のある約束。
契約は申込みとそれに対する承諾があればそれだけで成立するのです。もっと言うなら契約書を交わさなくとも、口約束で契約は成立するのです。
たとえば、今回小森さんは「ジーンズを50本お願いします。」
守さんは「承知しました。ジーンズ50本ですね。」と会話するだけで契約は成立するのです。
いちいち売買契約書を交わさなくてもです。
契約は売主と買主が合意して権利と義務の約束をすることだと言ってもいいでしょう。
今回のように約束をしたらその契約を守る義務が発生します。
余程のことがない限り、どんな内容の契約を結ぼうと原則自由なのです。
もちろん良識に反することや詐欺や強迫による契約は認められませんが・・・。
今回のケースでは守さんは売主として古着を販売しています。
そして小森さんにジーンズを50本渡すという契約をしました。
つまり、ジーンズを引き渡す義務が生じたわけです。
しかし守さんはプロではありません。学生であり、やっているのはアルバイトなのです。
それなのに賠償しなければならないのでしょうか?
学生でも賠償責任あるの?
結果から言うと、学生であろうとアルバイトであろうと義務を逃れる理由になりません。
もし、守さんが未成年であったなら、親の同意を得ていない契約は取り消せるのですが、残念ながら守さんは21歳、すでに成人しているわけです。
ということは守さんは責任を負わないといけないわけです。
正当な理由もなく、約束が守れない状態になってしまった場合は、契約相手の小森さんから契約を解除されたり損害賠償を請求されたりしても仕方ないのです。
契約書には初めから「損害賠償の予約」を入れておいてもいいことになっています。
このケースでも小森さんはしっかり契約書に「納期に間に合わず、買主(小森)が直接仕入れた場合には、その差額を売主(守)が賠償する。」と入れていましたから、予約どおり損害を請求できるのです。
守さんは損害賠償額が不当であることを証明できない限り、60万円を支払わなければならないことになります。
守さん、浮かれ過ぎでしたね。
ちょっと欲を出してしまったばかりにたいへんなことになってしまいました。
今回は「損害賠償の予約」を契約書に盛り込むなど、プロの小森さんが一枚上でしたね。
守さんにとっては高い授業料になってしまいました。
契約を結ぶときには書面を隅から隅までよく読んで、納得がいかない内容やわからない場合には安易にサインをしないようにしましょう。
冷静にその契約を本当に守れるのかじっくり考えることです。
大きな儲けに大きなリスクは付き物。
守さんにはこの経験を無駄にせず、おしゃれですてきな、そして賢いバイヤーになってほしいと思います。
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