認知症増加による行方不明者増加!

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個人情報の壁が立ちはだかる現状

俳諧

18年前に埼玉・狭山市で保護された男性の身元判明と県が正式発表した(フジテレビ系(FNN) 6月5日(木)18時44分配信)。

これは、18年前に路上で保護された認知症とみられる男性が、18年後になって身元が判明し家族に再会できたというニュースです。

このような認知症または認知症とみられる方が行方不明になる件数は年々増加しています。
届け出は2013年だけで1万332人にものぼるという。

そこで、私の友人が養護老人ホームで働いているので、身元不明で保護された方の施設内での様子を聞いてみました。

「ある方について言えば、その方が保護された当時、すぐに認知症の疑いがあると分かりました」
「どうして?」
「健康で、こちらの問いかけに対しても、好きな食べ物は?と聞けばきちんと答えるが、家族について聞くと、弟がいるが結婚して遠くに行っちゃった」、「家はどこ?と聞くと、みんな死んじゃって誰もいないなど、曖昧な回答になるんです」
このような症状は認知症が疑われる状態であり、その方に関しては氏名や住所も言えない状態。
こういう場合には、認知症だとすぐに分かるとのことです。

そして、この方に関しては警察により保護され、自治体からの要請を受けて入所となったので、認知症による行方不明者だと判断したそうです。

また、身元の確認については自治体やや警察と連携して施設側でも行われるのですが、本人から住所や氏名などが聞き出せないので、簡単ではないとの話でした。

更に、身元が分かりそうな所持品を持っていないなどの場合、身元の特定は困難になり、そのまま入所して預かるケースもあるとの事でした。

このようなケースは高齢者増加による認知症増加に伴い、増えています。
今後も増加する事が予想され、早期解決が問題となっています。

もちろん家族側も届出はしていますが、発見されないというケースもあるのです。
家族としては警察に捜索願いを出します。
けれど、警察は保護した人の住所や氏名が分からないため、捜索願が出されていても一致せず、家族のもとへ帰れなくなるケースもあるのです。

また、警察の対応としては、保護してから24時間以内に身元が確認できなければ、警察官職務執行法に基づいて自治体に対応を引き継ぐことになります。
しかし、引き継いだ後の自治体との情報共有には規定がなく、その後の情報について把握していません。
つまり、家族側の届出はそのまま放置となると言う事ですね。

家族側もただその状況を見守っていては何も解決しませんから、周辺の病院や施設などに問い合わせたり、自力の捜査を行います。
ですが、ここで個人情報の壁が立ちはだかるのです。

施設や病院は、家族からの問い合わせだったとしても、『個人情報』という理由から答えたくても答えられない…というのが現状です。

このように、認知症などの行方不明者を捜索する際には、個人情報保護法の壁が厚く立ちはだかり、途方にくれるしかない状況がよくあります。

家族としては、安否を知りたくても自力ではどうにもならなくなってしまうのですね。

もし自分がこのような家族側に立ったなら、個人情報保護法のせいで家族は安否すら確認できないの?と、個人情報保護法って何!って、頭にきそうです。

個人情報保護法とは?

そもそも個人情報保護法って何でしょうか?
どんな場合でもダメなの?
そんな疑問もでるかと思いますので、少し説明していきます。

関連する条文としては、
第16条1項
個人情報取扱事業者は、あらかじめ本人の同意を得ないで、前条の規定により特定された利用目的の達成に必要な範囲を超えて、個人情報を取り扱ってはならない。

第23条1項本文
個人情報取扱事業者は、次に掲げる場合を除くほか、あらかじめ本人の同意を得ないで、個人データを第三者に提供してはならない。

え?どんな場面でも本人の同意を得なくてはいけないの?
この条文だけですと、生命に関わるような重大な場合などには対処できませんね。

そこで、第23条1項を見ると「次に掲げる場合を除く」とあり、本文の下にいくつかの例外を定めています。

これを見ていくと、
1 法令に基づく場合
2 人の生命、身体又は財産の保護のために必要がある場合であって、本人の同意を得ることが困難であるとき。
3 公衆衛生の向上又は児童の健全な育成の推進のために特に必要がある場合であって、本人の同意を得ることが困難であるとき。
4 国の機関若しくは地方公共団体又はその委託を受けた者が法令の定める事務を遂行することに対して協力する必要がある場合であって、本人の同意を得ることにより当該事務の遂行に支障を及ぼすおそれがあるとき。

このように、本人に同意を得なくても情報を公開してよい、という例外があります。
今回のニュース記事でも、この例外によって県が本人の情報公開したところ、30件以上の問い合わせが寄せられました。
そして、問い合わせの中に親族と名乗りその可能性が高いと思われる人がいたのです。

結果、行方不明者となった男性の身元が判明し、18年ぶりに家族と再会できたと。
県の情報公開によって、解決したという事になります。

ただし、自治体によって例外に対する解釈は様々であり、認知症や徘徊等により行方不明になっている方について情報公開するかどうかの判断は難しいようです。
つまり、各自治体の判断次第で身元不明者の情報公開をするかどうかが決まりますから、今回の県の対応は評価できる判断だったと思います。

しかし、個人情報の壁を乗り越えて情報公開したケースもある一方で、
まだまだ個人情報の壁を乗り越えられない自治体も多くあります。

自治体側にしてみると、安易に認知症などによる行方不明者の全てに関して例外規定を適用して情報公開をする、というのは難しいというのが現状であり、慎重な判断が必要のようです。

ただ、今後もこの問題は深刻化するでしょう。
そこで、警察庁は、認知症の特性に配慮し、氏名だけではなく所持品や着衣などの断片情報からも調べられるような身元確認照会システムを用いる方針を示しました。
また、自治体と情報を共有することなどを全国の警察に指示しました。
これは、一歩前進といったところですね。

なお、自治体としても、徘徊などの認知症による行方不明者の増加を防ぐため、該当の恐れのある高齢者を事前に登録し、警察だけでなく市民にも捜査協力が求められるような体制をとっている自治体もあります。
もっともっとこのような自治体が増えていくことを期待したい!

2015年には高齢者人口が26.0%、2050年には35.7%に達すると見込まれています。
日本人の3人に1人が65歳以上という超超高齢社会になるわけです。
高齢者増加に伴い、間違いなく認知症患者も増加します。

一刻も早く、上記のような取り組みが日本中で統一され、今後の行方不明者増加に歯止めをかけていただきたい。

行方不明者にかかる負担や責任はどうなる?

俳諧2

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今回のニュースでは、身元不明で自宅に帰れなかった男性は、18年という歳月を保護措置によって養護老人ホームで生活していました。

家族としては再会できた安堵と同時に心配になるのが、その期間中の施設利用費の負担についてです。

今回のニュースでいえば、18年間という長い期間です。
この期間をずっと施設で暮らしていたわけですから、生活費や施設の利用費を考えると心配にもなります。

これに関しては、結果から言うと、保護入所は自治体による措置となるので、本人負担はなく行政が全てを負担する事になります。

ただし、この措置費には日用品と居住費・食費が含まれると考えられているのですが(老人福祉法第28条)、医療費に関しては含まれていないのです。
それに、措置入所がとられると、入所前まで生活保護を受給していた人は、受給がストップすることがあります。

では医療が必要となったらどうするの?
年金収入なども全くないような場合だと、生活保護は継続します。
しかし、あくまでも医療扶助のみで、生活扶助は停止します。

つまり、医療が必要で本人に費用負担能力がない場合、生活保護(医療扶助)は受給できるという事になりますね。

そして、今回のように身元が判明し家族の元に帰れる事になった場合には、契約に基づいて介護保険を利用するように切り替えることになります。
すなわち、行方不明者の措置入所に関しては、費用問題は一安心という感じです。

しかし、認知症の高齢者を抱える家族にとって、最悪なケースとなった事件及び判決がありましたので、紹介しておきます。

認知症高齢者を抱える家族に損害賠償

事件の概要ですが、愛知県大府市で2007年12月、徘徊症状がある認知症の男性(当時91)が電車にはねられ死亡した。
この事故をめぐり、JR東海が男性の遺族に損害賠償を求めた裁判がありました。

そして、今年4月24日に名古屋高裁で控訴審判決があったのですが、裁判長は妻(91)に対し約360万円の支払いを命じたのです。

裁判長の判決文を見ると、「外出を把握するための出入口のセンサーの電源を切っていた。徘徊の可能性がある男性への監督が十分ではなかった(一部省略)」とあります。
裁判長は妻にも責任があると判断したのです。

因みに、この裁判の一審では、JR東海は妻だけではなく、認知症の男性(91歳)の子(長男)に対しても損害賠償を請求していました。
一審の判決は、控訴判決よりも厳しく、妻と長男に対して支払いを命じています。

しかし、控訴審判決では、裁判長は子(長男)には認知症男性(91歳)を見守る(監督する)義務はなかったとして、JR東海の請求を棄却しています。

結果的に言うと、認知症患者が徘徊した場合、その妻(家族)には監督義務があると認定されたわけです。

これをどう感じますか?
私はこの判断(判決)は、現代社会とあまりにもギャップがあると、違和感を感じたんです。
というのも、私は以前、認知症に関係する相談案件を扱ったことがあり、その時も司法や行政に対して、違和感を感じたのです。

納得いかない事例

相談者の奥さんは当時80歳、認知症ではあったものの徘徊するほどではありませんでした。
しかし、突然、家から消えてしまい警察に捜索願いを出したそうです。
奥さんはすぐに保護されていたのですが、氏名や住所が言えなかったため、身元が判明せず自治体に引き渡され、措置入所となりました。

心配で仕方なかった相談者は、周辺の病院や施設などを一生懸命探し回ったとの事でした。
チラシを配ったり、奥さんが行きそうなところを捜し歩いたそうです。

結果、1年後にたまたま運よく発見する事ができたようですが、それは偶然の出来事であり、本当に運が良かったとしか言えませんでした。

相談者は、「警察は何もしてくれなかった、自分でやるしかなかった」「自治体だって同じだ」と嘆いていました…。
「身元の判明ができないのは警察の怠慢ではないのですか?自治体との連携ができていればすぐに見つかったはずだ!警察に対して損害賠償はできないのですか?」
これが相談内容でした。

この相談を聞く限りでは、警察の怠慢だ!と怒る気持ちは分からなくもないですね。
しかし、弁護士の回答は、「もし警察の怠慢を訴えた場合、同時に行方不明に至った家族の責任も追及されることになります」と冷静な一言でした。

その後、弁護士に説得されその相談者は帰宅しましたが、私は違和感を持ちました。
別に弁護士が悪いと思ったわけではありません。
弁護士は現在の法に基づく司法の判断を伝えたに過ぎませんから。

けれど、もし自分の親が同じような事になったら!そう思うと警察や自治体に文句の一つも言いたい気持ちになりませんか!?

私の場合、過去にこのような事もあったので、認知症高齢者の扱いやその家族に対する社会の仕組みに違和感を持っていたんです。
そこにきて今回の判決です。

個人的には納得ができないのです。
介護に携わった妻への配慮が全くない。
重度の認知症患者を介護していたのは91歳の妻です。
妻もまた要介護1と認定されていました。

このように高齢者が高齢者を介護するというケースは多くあります。
今後も増えるでしょう。

そのような現状の中、家族だけで認知症を支える事はとても困難です。
地域や社会全体としてサポートする体制が望ましいと思いますし、それが求められているのだと思います。

また、超高齢者社会を迎える日本にとっても早期に対策が必要であり、社会全体としての課題だと思うのです。
しかし、裁判長のこの判決は、望まれる社会とは全く逆の判断となりました。

高齢者の妻に対し「センサー付きチャイムの電源を切っていたことで介護が十分でなかった」と…。
いやいや、十分やっていたと思いますよ。

仮にセンサー付きチャイムの電源を入れていたらこの事故は起きなかったとでも言うのでしょうか?
徘徊に対応するのはそんな簡単ではありませんよ。
ヘルパーを雇った状態であっても徘徊を100%防止する事なんてできません!
ちょっとした隙です、トイレにいっている隙かもしれません。
ほんの少しの隙に家を出て行ってしまうのです。
24時間監視しろとでも言っているのでしょうか?
介護は一日では終わりません、終わりが分からずいつまでも続くのです。
無理ですね。

このような状況に置かれている国民はこの事件の妻だけではありません。
だからこそ、もっと介護に携わっていた家族側の目線に立ってもらいたかった。

責任を家族だけに押しつけているとしか思えない。
一歩譲って、もし家族に責任を取らせるなら、鉄道会社にだって責任追及するべきです。
人が入れないような踏切にしなさい!とね…。

そもそも、これだけ認知症が増加している日本なのだから、公費でそういう踏切にして下さい!って感じますね。
できないなら、裁判長は鉄道会社の訴えを取り下げるように説得・指導するべきだったのでは?

これでは、認知症高齢者(徘徊の可能性があるもの)を外出させるな!監禁しておけ!そう言っているのと同じです。
けれど、残念ながらこれが現行法に基づく司法の考えなんですね。

このように法と現実は時代によって乖離が生じ、違和感を持つ方は私だけではないと思います。
しかし、これを解消するためには司法ではどうにもなりません。

立法を司る国会議員の方々にもこのようなニュースにもっと関心を持っていただき、法が現実社会と適合するように対策を考えてもらいたいものです!

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